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そもそも,遺言なんて残す必要があるの?うちの子ども達は皆仲が良いから,揉めるなんて想像もできないんだけど・・・。

 親の言う「うちの子は,みんな仲が良いから大丈夫」・・・これほど当てにならない言葉もないでしょう。
 奥さん同士が仲が悪く,相続に口出しをして泥仕合の遺産分割を演じることもあります。相続資格のない「外野」のせいで話がこじれる,というのは本当に多いものです。

 また,「遠方に住む子」が「親と同居していた子」に対して「親父の財産を他に隠し持っているんじゃないのか?」と勘ぐったり,逆に「親と同居していた子」が「遠方に住む子」に対して「親の介護でこっちは大変な思いをしたのに,平等に分けろなんて図々しい」と不満を持ったり・・・。

 他にも,親としては平等に育てたつもりでも,「弟は高い学費で私大医学部に行かせてもらって医者になった。自分は大学までずっと公立だったのに・・・」といった不満を持ったりと,「相続人同士がいがみあう理由」は枚挙にいとまありません。

 遺言をすれば,「自分の財産を誰に,どのように相続させるか」を自分で設計でき,遺産の分け方で子ども達が揉める余地はなくなります。子ども達のためにも,内容を練り上げた遺言をしてあげたいものです。

遺言って,自分で書いてもいいんでしょ?わざわざ公証役場で作る意味なんてあるの?

 確かに,自分で作成する「自筆証書遺言」も法律上は有効です。
 ですが,遺言というのは要式が厳格に決められており,一般の方が自力で作成しようとすると「要式違反」で無効になることが多いのです。(弁護士になって自筆証書遺言をいくつも見てきましたが,有効と思えるものは数えるほどしかありませんでした)
 また,有効な自筆証書遺言であっても,家庭裁判所で「検認」をしてもらわないと,不動産登記や預金引き出しには使えず,余計な手間がかかります。

 この点,公証役場で作る「公正証書遺言」なら,要式違反で無効になることはほぼありませんし,「検認」をしなくてもそのまま不動産登記や預金引き出しに使えます
 実務上,遺言は「公正証書遺言一択」といってもいいでしょう。

公正証書遺言をするのに,どうして弁護士の関与が必要なの?

 確かに,公正証書で遺言をする場合,公証役場が「遺言の方式」をきちんとチェックしてくれます。そのため,方式違反で無効になる恐れはほぼありません。(たまにありますが・・・)

 とはいっても,公証人は遺言の内容面についてまではアドバイスしてくれません。そのため,遺言の内容については自分で考えねばなりません。
 ですが,「どの財産を誰に相続させるか」については,その財産の評価額を念頭に置いてバランスをとらないと,逆に相続でもめ事を発生させてしまいます。(各相続人は「遺留分」といういわば「相続の最低保障分」を持っているためです。遺言のせいでこの遺留分を削られる相続人は,たくさん財産をもらえる相続人に対して「取り過ぎた分をこちらに回せ。」と請求ができるのです。)
 こういった遺留分の問題が起きないような遺言を組み立てるには,弁護士のサポートが不可欠となるのです。

遺言執行者って何?遺言で遺言執行者を指定すると何かメリットがあるの?

 遺言執行者は,いわば「亡くなった人の代わりに,遺言の内容を実現する役」です。遺言をした人が亡くなった後,遺言執行者は遺言に書いてあるとおりに財産を移転させます。
 遺言執行者がいれば,財産を相続人達に移す手続を全部仕切ってくれますので,相続人の手間が省けます。
(経験された方は分かると思いますが,「不動産」「預貯金」「株式」等の相続手続はかなり面倒です)

 また,遺言執行者がいるかいないかで差がつく場面はいくつかありますが,一番分かりやすいものとして「預金の引き出し」が挙げられます。

 例えば,「A銀行B支店口座番号1234567の預貯金は,長男太郎に相続させる」という遺言があったとしましょう。

 遺言執行者がついていないと,銀行側は「遺言が無効かも知れない。なので,他の相続人全員のハンコをもらってきて下さい(相続人間のもめ事に巻き込まれたくないしなあ・・・)」といって払い渋ってくるのが通常です。他の相続人が協力してくれない場合,長男太郎さんはA銀行相手に裁判を起こして,勝訴判決をもらわないといけなくなります。何のために遺言をしたのか分かりませんね。

 ですが,遺言の中で遺言執行者を指定し,「遺言執行者は預金の払い戻しができる」と書いておけば,銀行は遺言執行者の払い戻し要求に素直に応じることが多いです。(この辺の対応については,銀行によっても反応がまちまちのようですが・・・宮崎県内の地方銀行・信用金庫は,遺言執行者であれば素直に払い戻しに応じてくれます。)

 遺言執行者を指定することで
「遺産の引き継ぎがスムーズになる」
「特に預金に関しては,他の相続人のハンコや裁判手続を省略できる」
というメリットがありますので,遺言をする際にはこの「遺言執行者の指定」を漏らさないようにしましょう。

遺言の費用や,遺言執行者に払う報酬はどのくらいになるの?それはいつ発生するの?

 遺言の中で,遺言執行者を指定した方がいいことは既にお話ししたとおりです。ここでは,弁護士を遺言執行者にした場合にかかる費用・報酬についてご説明します。

 まず,遺言をする時点で,弁護士費用として「遺言作成のサポート費用(10万円前後)」をお願いしております。
 このほか,公正証書で遺言をする場合には,別途公正証書作成手数料がかかります。(手数料は,「遺産総額」「財産の配分方法」によって幅がありややこしいのですが,4~10万円程度みておけば良いでしょう。)

 そして,遺言の中で,遺言執行者の指定とともに,「遺言執行者の報酬」も設定して頂きます。当事務所の場合,「遺産総額の1.5%~2.0%」の報酬を設定して頂くようお願いしております。
 そして,遺言執行者は就任後に「遺産の調査」「相続人等への財産引継」を行うわけですが,この際に,遺産全体から報酬を差し引いて各相続人等に財産を配分することになります。

 以上のように,生前には「10万円ほどの弁護士費用」「公正証書作成手数料」が,亡くなられた後に「遺産総額の1.5%~2.0%の報酬」が,それぞれかかることになります。

※ ちなみに,遺言執行者を指定しなかった場合は,上に書いたように,場合によっては「銀行を相手に裁判をする」ハメになります。その場合にかかる弁護士費用は,
2.0%では済まないでしょう。そういった意味では,遺言執行者を付けることは,費用の節約にもなります。