弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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事業承継の重要性~「将来」ではなく「今」の問題です!~

 「事業承継の準備をしましょう」といっても,現役の経営者の方の反応は今ひとつです。
 「自分はまだ元気だし,自分の引退後のことを考えるのは気が早い」
 「事業承継の準備をしたって,売り上げが伸びるわけでもないし,今ひとつ力を入れる気にならない」
 「っていうか,自分が引退した後のことなんてどーでもいいし(ここまでぶっちゃける人は少ないですが・・・)」
というのが理由のようです。

 ですが,事業承継の準備というのは一朝一夕に出来るものではありません。時間をかければかけるほど,円滑なバトンタッチができますので,早くから始めるに越したことはありません。
 また,事業承継の準備は売り上げ増に直結するわけではありませんが,対外的評価には少なからず影響します。「高齢のワンマン社長が仕切っていて,後継者が全然育っていない。それどころか後継者の目処も立っていない」会社があなたに取引を申し込んできたというシーンを思い浮かべて下さい。単発・短期の取引ならともかく,長期的なお付き合いはちょっと躊躇するのではないでしょうか?
 更に言えば,事業承継は対外的評価だけでなく会社内部にも関わるテーマです。有能な若手ほど,「いつまで続くか分からない会社」にさっさと見切りをつけて出て行ってしまう傾向にあります。(逆に,よその会社でやっていけない人材ばかり残ってしまいます・・・)

 ここまでお読み頂ければ分かると思いますが,事業承継は「将来の問題」ではなく「今の問題」なのです。事業承継をきちんと準備することで,「今の」会社経営が安定するわけです。
 しっかり準備をして,事業に専念できる体制を作りましょう。

まずは現状分析から

「事業承継の準備といっても,何から手を付けたらいいのか分からない」というのが,経営者の皆さんの正直なところかと思います。
 谷田が事業承継のために必要な情報をお聞き取りして,最適な事業承継の方針をご提案します。

最初にお聞き取りする情報は,概ね以下のようなものです。
・会社の株主構成
・主要株主の推定相続人
・後継者の有無
・会社の事業用財産
・代表者個人等が事業のために提供している財産
・会社の財務状況
・主な仕入先・販売先
・会社の経営体制

 いずれも,事業を円滑に後継者に引き継ぐのに不可欠な情報ばかりです。これらをお聞き取りし,関連資料もお預かりして現状分析を行います。

後継者の属性にあった承継計画を

 既にお話ししたとおり,本コーナーでは
1,親族
2,親族以外の会社内スタッフ(取締役や従業員)
を後継者候補とした場合の,事業承継に際しての注意点をご説明していきます。

 いずれの場合にも共通する注意点は二つです。
 一つは「会社の支配権(=株式)を経営者がきっちり束ねること」です。
 会社法の教科書などを見ると「株式会社では,会社の大枠の方針を株主の多数決で決めさせることで,意思決定に慎重さを云々・・・」「株主のチェックを挟むことで経営者の暴走を防ぎ云々・・・」等とお約束のように書かれているのですが,フットワークの軽さ・リーダーシップを生かすべき中小企業にとって,このような慎重さは足かせになる事の方が多いです。乱暴な言い方をしますと,中小企業が民主主義を採用していたら,大企業に勝てる要素なんて一つも無くなってしまいます
 そういうわけですので,「株式は代表者が握る(最低でも3分の2)」ということが重要になってくるのです。

 もう一つは「会社内部や取引先が動揺しないように配慮して権限を委譲していくこと」です。
 ある日突然,社長が会社の経営や現場に全く関わっていない息子を連れてきて「来月からこいつが社長になるからよろしく。これは代表者命令だから。」等と言っても,従業員(特に古参の幹部)が納得するわけがありませんし、取引先にも動揺が走るのは目に見えています(上の「1、親族」の場合ですね)。
 ここまで極端な話は少ないにしても,配慮のないバトンタッチにより従業員の反発を買ってしまい,幹部を中心に有能な従業員が大量に社外へ流出,という悲劇はしばしば耳にするのではないでしょうか。

 以下では,後継者の属性ごとに分けて事業承継の注意点を述べていきますが,以上の二点さえ外さなければ,自然と承継計画は固まっていきます。

親族への承継

 親族(子など)へ事業を継がせるにあたって谷田が主に助言・お手伝いするのは主に以下の2点です。

1,後継者が経営者として会社の従業員・取引先に受け入れられるようにする(経営面)
 「当たり前じゃないの?」と言われそうですが,とても大事なことです。ここで失敗すると事業承継を待たずして会社が空中分解することもあります。
 単に現代表者の側において経営者のやり方を見せるだけでなく,現場での実戦経験を踏ませることも重要になってきます(このあたりのバランスは業種・規模によりけりですが)。
 また,時期をおいて少しずつ経営の権限を委譲していくことで,会社内への周知と後継者の育成を併せて行うことが出来ます。この「事業承継の経営面」については,谷田は中小企業診断士として助言を差し上げることができます。

2,後継者に会社の経営権を確実に承継させる(税務・法務面)
 今更ではありますが,この国では財産を移すにあたって色々な名目で課税されてしまいます。後継者に多額の貯蓄があり,会社の株式を評価額通りに買い取れるのであればこの点はクリアできるのですが,実際はそうもいきません。生前に贈与をすれば贈与税が,相続時に継がせるのであれば相続税を意識する必要があります。
 また,税金の問題をクリアできたとしても,今度は遺留分というやっかいな問題があります。遺留分については別途詳細な説明をしますが,要するに「後継者以外の相続人にも相続の最低保障分がある(=遺留分)」ため,後継者に継がせる株式や事業用財産が多すぎると,他の相続人からストップがかかってしまうということです。遺留分によって会社の支配権が分散することのないよう,適正な財産の分配案をご提案致します。
 そして,その分配案を公正証書遺言として残し,遺言執行者として弁護士を指定すれば,相続トラブルで事業承継が失敗する危険を大幅に押さえることができます。
 遺言書作成と,遺言執行にかかる弁護士費用はこちら。

親族以外への承継

 時勢といいましょうか,一昔前に比べると親族以外に事業を継がせる(というより,子が家業を継いでくれない)ケースが増えてきました。平成19年以降は,「親族以外への承継」の件数が「親族への承継」の件数を上回り続けています(平成26年版中小企業白書)。この傾向は今後も進行するものと見られ,親族以外への承継は重要な選択肢の一つとなるでしょう。
 親族以外(主に「会社の幹部」や「従業員」)に事業を承継させたい場合の注意点は,以下の二点です。

1,候補者の人選(経営面)

 会社の日常業務に関しては有能な幹部・従業員も,経営を任せてみると今一つ振るわないことがあります。また,後継者にとっても,実際に経営を任されてみると「こんなはずではなかった。」と感じることがあります。
 こういったミスマッチは会社・後継者両方にとって残念なことですので,まず後継者には経営の一部を任せてみて,お互い様子を見る「調整期間」を設けることが有益です。
 また,後継者に経営権を譲渡した後,旧代表者がどのように経営に関わるのかも考えねばなりません。旧代表者が突然経営から手を引いてしまうと取引先は困惑しますし,かといっていつまでも代表権を手放さないとなるといつまで経っても後継者は「お飾り」扱いのままになってしまいます。
 これら権限委譲の方法・ペースについて,混乱を招かないような計画を中小企業診断士としてご提案させて頂きます。

2,承継方法(法務・税務面)
 親族に承継させる場合と異なり,相続の機会に親族以外へ承継すること(=「遺贈」といいます)は,法務・税務両面からあまり現実的ではありません。親族の持つ遺留分の割合が大きいことや,親族外に遺贈をした場合相続税が割高になること等が理由です。
 また,生前に株式を贈与することもあまり好ましい手法ではありません。高額の贈与税がかかりますし,後日親族らに遺留分を主張されるおそれもあるためです。
 そのため,承継方法は必然的に「現経営者の持つ株式を,適正な評価額で後継者に売却する」方法によることになります。
 もちろん,後継者にまとまった手元現金があればいいのですが,そうでない場合は株式購入資金の調達に一工夫必要となります。調達方法も含めて,円満な承継方法をご提案させて頂きます。

 その他,一般に親族外承継の場合,旧代表者が負っていた連帯保証債務の扱いを巡って難渋するケースが多くみられます。
 普通に考えれば,経営権を後継者に譲るのですから,それに伴って旧代表者の連帯保証債務も後継者に移して欲しいところです。ですが,金融機関にしてみれば実力未知数の後継者の支払能力・資産だけをあてにするわけにもいかないようで,「旧代表者の連帯保証債務は解除しない。」「追加で後継者にも連帯保証人になってもらう」と言われることが多いようです。少しでも保証債務の負担を減らすため,債務の減縮と金融機関との交渉が必要になってきます。
 この点は,谷田が弁護士として交渉・助言をさせて頂きます。