弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

heritage division

 「遺言が無い」「相続人が複数いる」という状態で相続を受け入れる場合,以下の流れに沿って遺産分割を進めていくことになります。
 なお,遺産分割について当事務所が代理する場合の弁護士費用はこちら。

遺産分割のスタート

 元々仲の悪い相続人同士であればもちろん,そうでない場合も遺産の分け方を巡って揉めることは珍しくありません。相続をきっかけに,それまで抑えていた不満が一気に噴出するわけです。

「亡くなった親の介護を全然しなかったくせに,平等の取り分を主張するなんて図々しい」
「自分は大学までずっと国公立校に通って親に負担をかけなかったのに,兄は私立の医学部に行かせてもらって医者になった。不公平だ。」
とかはもはやお約束です。

 中には
「自分は親の家業を継いで不安定な生活を送っている。弟は安定した勤め人で気楽なもんだ。」
という兄と,
「兄は親の家業を継いで贅沢をしている。自分はしがないサラリーマンだというのに。」
という弟が対立するという,「隣の芝生は青い」を地でいくような話も決して珍しくありません。
 更に,相続人の配偶者等のいわゆる「外野」まで対立に加わってしまうと,もはや収集はつかなくなります。

 こういった場合こそ,第三者である弁護士を代理人に立てることが有益です。
 「家族間のゴタゴタで弁護士が入ってきたら余計に揉めるんじゃないの?」と心配される方も多いのですが,むしろ逆です。
 家族同士だと,感情的な言葉をぶつけるとまさに「売り言葉に買い言葉」となりますが,言葉をぶつけられたのが弁護士であれば,こういった罵り合いの応酬にはなりません。感情的な言葉をいくらぶつけられても,弁護士にとっては自分の悪口でもないので平気なのです。不謹慎な話ですが・・・。
 そのうち,感情的になっている一部相続人も「弁護士にいくら文句をぶつけても空しいだけだな。さっさと遺産分割を進めよう。」となるわけです。

 感情的になった家族同士で話し合うと,取り返しがつかないくらいこじれることがあります。
 ちょっと話し合ってみたところで「これは折り合いがつきそうにないな・・・」と思ったら,お早めに弁護士にご相談頂くことをオススメします。

まずは弁護士を通じた話し合いから

 「遺産分割を弁護士に任せたら,いきなり裁判沙汰になるの?」というご心配をよく耳にします。
 ですが,弁護士にとっても,遺産分割を大ごとにしたいわけではありません。(何のメリットもありませんし。)まずは,対立相手の「怒りのポイント」「譲れない要素」などを,やんわりと聞き出すところから始めます。
 これらの点について調整が可能であれば,速やかに各当事者が飲めるような遺産分割案を検討し,任意の交渉を詰めていきます。

 逆に,「とても話し合いでは無理だな」という場合は,しかるべきタイミングで次のステップ「遺産分割調停」へと移ります。

決裂したら・・・遺産分割調停へ

 任意の遺産分割協議が決裂したら,交渉の舞台は家庭裁判所に移ります。
 といっても,いきなり強制力のある裁判をするわけではありません。

 遺産分割の場合,まずは「調停」といって,家庭裁判所の調停委員を交えた話し合いからスタートします。
 「亡くなった人名義の財産の中には,厳密には遺産とはいえないものがある」といったテーマ(いわゆる「遺産の範囲」を巡る問題)がなければ,基本的にこの「調停」の中で遺産分割協議が進んでいきます。

 任意の交渉の場合と違って,中立な裁判所が間に入って解決案を模索してくれることもあり,調停前の段階では頑なだった当事者が態度を軟化させることも多いです。
 当事者の言い分が大きく開いている場合も,時間をかけてじっくり話し合うことで,最終的に調停が成立することもあります。

 調停であれば,遺産の分け方以外にも,様々な要素について調整がきくため,大変有益です。まずは何より,調停成立を目指して動いていくことになります。

 「調停ではどうしても折り合いがつきそうに無い」という場合には,調停で提出された言い分や証拠も判断材料にして,裁判官が「審判」という形で決着をつけます。
 要するに,裁判官の判断で,バッサリと遺産分割の方法を決めてしまう,というわけです。
 この「審判」は,各当事者の話し合いでまとまる「調停」と違って,どうしても硬直的な内容にならざるを得ません。

 「一筆の土地を,単純に相続人達の共有にしてハイおしまい。」という,何の解決にもならない審判を見たこともあります。(この場合,共有状態を解消するために,共有物分割請求訴訟という裁判を後日追加で起こすハメになります。これでは何のための審判なのか分かりませんね。)

 ただ,「調停」「審判」いずれにしても,何らかの形で遺産分割に決着はつくわけです。
 「面倒ごとはイヤだなあ」とばかりに,遺産分割を何年も棚上げにすると「対立当事者が死亡して,相続人が更に増える」というように,一層解決が遠のいてしまいます。(そして,更におっくうになって問題を放置してしまうという・・・。)

 そういった問題の先送りをするくらいであれば,家庭裁判所できっちりと話をつけるのが有益でしょう。

遺産分割の話がまとまったら?~他士業との連携~

 遺産分割事件の円満な終結には、弁護士以外の専門家の助力も不可欠です。
 例えば,相続税課税の範囲が拡大された現在では,相続税申告のために税理士の関与が必要になることが多いです。
 また,不動産の相続登記をするとなると,司法書士の出番となります。
 その他,特に宮崎県では農地を巡る争い(正確には「押し付け合い」?)も多く,農地を他の地目に転用するとなると,行政書士や土地家屋調査士の助力も必要になります。

 当事務所は,こういった「他士業との連携」にも慣れており,信頼できる他士業とのネットワークも構築しています。
 「あまり税金に詳しくない弁護士に遺産分割を任せたら,後で高額の相続税を納めるハメになった」なんてことのないよう,相続全体を見据えた解決を意識していますので,安心してお任せ下さい!

(番外編)相続当事者が大多数に上るケース

 最近結構多いのが,「相続人が二桁に上る相続」というものです。
 特に「兄弟がたくさんいらっしゃる方が,子どもを残さずに死亡した」というのが典型例です。
 この場合,多数の兄弟達へ相続権が移ってしまいます。更に,その兄弟が先に死亡していた場合は,その兄弟の子に(一代限りですが)相続権が移ってしまいます。ここで子が複数いると,更に相続人の数がふくれあがってしまうわけです。
 多数の相続人の中には,海外に移住していたり,行方不明になっていたり,刑務所に服役(!)している人もいたりして,連絡を取るのも一筋縄ではいかなかったりします。

 こういった場合,まずは相続人の調査をきっちりと詰めた上で,相続にあまり関心の無い相続人からは相続分を買い取るなどして,相続人の数を減らすところから進めていきます。
 ある程度相続人の数を絞り,通常規模の遺産分割と同じような土俵を作ったところで,遺産分割協議を始めるわけです。
 こういった「相続人多数の案件」についても当事務所はノウハウがありますので,お困りの方がおられましたら是非ご相談下さい。