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クレーマー対策の大切さ

2019年10月21日

 前回までは,不動産トラブルについていくつかご紹介しましたが,今回はうって変わって「クレーマー問題」についてご説明します。

 事業を営んでいると,遅かれ早かれぶつかるのが「クレーマーによるトラブル」です。
 特に,不特定多数の消費者を相手にする小売業や飲食業では,他の業種に比べてクレーマーに絡まれる可能性は段違いに高くなりますので,絡まれたときの対策は平常時から考えておく必要があります。

 クレーマーと一口に言っても,「粘着レベル」「言い分の正当さ」等はまちまちです。
 「粘着レベル」についてみますと,「電話口で言いたいことだけ言った後,あっさり引っ込んでくれる」ものから,「執拗に電話してくるだけでなく,店舗や事務所にまで押しかけてきて従業員を畏怖させる」という激しいケースまであります。

 前者は弁護士を立てるまでもない(というか,弁護士を立てない方が穏便に済む)のに対して,後者までいくと現場従業員に任せるには荷が重いです。こちらは,きちんと弁護士を立てて対応しないと,現場従業員のストレスがどんどん増大していきます。

 また,「言い分の正当さ」についても「全くお話にならないような難癖」から「一応こちらに落ち度があるけれど,法外な賠償を要求してくる(料理提供時の粗相でお客様の服を汚した,というケースが典型です)」まで様々です。前者は毅然と追い払わないといけませんが,後者は追い払うわけにも行かず,お客様が納得して帰って頂けるようなお詫びや謝罪金を示す必要があります

 このように,「クレーマーの粘着度」「クレーム内容の正当さ」といった複数の要素が絡み合うことで,とるべきクレーム対応が変わってくるわけです。
 そこで,「クレーマーの粘着度がどのくらいだったら上司に上げるか・弁護士を立てるか」「クレーマーの要求がどういったものだったら応じるか,つっぱねるか」というガイドラインを作ることで,現場従業員のストレスはグンと下がります。
 このガイドラインによって,「どのくらい我慢したら上司にパスを回せるのか・自社の顧問弁護士が助けてくれるのか」「自分が直面しているクレーマーに,どういう弁償を提示すれば良いのか」といった「目安」が見えるようになるわけですから。

 このガイドラインは,地域や,その業種が気にするべき風評被害のレベルによって線の引き方は変わってくるので,弁護士とじっくり膝をつき合せて策定したいところです。

 こういったガイドラインに加えて,「クレーマーに絡まれた際,すぐに顧問弁護士に相談をできる連絡体制を整えておく」ことで,クレーマーへの備えは万全となります。

 現場従業員にしてみれば,「会社が,ガイドラインや顧問弁護士を通じて,自分たちを守ってくれる」という安心の下で仕事ができるわけですから,従業員の会社への定着率も好転することでしょう。

 逆に,このクレーマー対応を疎かにしていると,現場従業員が何とか自力でクレーマーに対応しようとして泥沼化し,離職したり,ひどいケースになると担当従業員の精神が病んでしまうという事態に陥ります。

 更に,この精神を病んだ従業員が,今度は会社を逆恨みして「会社が安全配慮を怠ったせいで自分は精神を病んだ。労災だ!」等と矛先を向けてくることは珍しくも何ともありません。

 人手不足の昨今,離職率が高まること自体勘弁してもらいたいところですが,それすらを上回るダメージが発生するわけです。(辞めるだけでなく,会社を攻撃する側に回りますので・・・)

 クレーマー自体は,(程度の差こそあれ)基本的に「理不尽な要求者」なので,会社に直接与えるダメージ自体は大したものではありません。裁判を起こしてくるクレーマーなんてレアですし,仮に起こしてきても反論は用意です。

 ですが,「お客様至上主義」の我が国においては,無茶なクレーマーであってもひとまず対応せざるを得ません。(この「お客様は神様」みたいな風潮自体,谷田としてはとても違和感があるのですが・・・)
 対応に当たらされる従業員の体力・精神・時間がクレーマーによってガリガリと削られ,ひいては会社の体力を減らしていくのです。

 クレーマー問題は,会社の体力を無駄に削られないためにも,平時から備えたいところです。