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借りる側が弱い?駐車場の賃貸借契約

2019年10月07日

 今回は,意外と盲点になりがちな「駐車場の賃貸借契約」についてお話をします。

 一般に,不動産の賃貸借は「借りる側の方が保護されやすい」です。

 前回まで4回かけて解説しましたが,例えば物件のオーナーが入居者を追い出す場合,「そう簡単には追い出せない」「仮に追い出せるとしても,相当な立ち退き料を払わないといけない」というのが原則です。

 普通の建物賃貸借契約書に「期間が満了したら,立ち退き料を請求せずに出て行かないといけない」という条項が入っていても無効です。
借家人は,契約書の記載を気にせず立ち退き料を請求できます。

 ただ,それはあくまで,借地借家法という特別法が適用されるおかげです。

 借地借家法というのは,「建物を所有するための土地賃貸借」と「建物の賃貸借」にしか適用されません。

 それ以外の土地賃貸借契約(例えば,駐車場とか,太陽光パネル設置用地を借りる契約)については,借地借家法は適用されないわけです。
 この場合,土地の借主の立場というのは,契約書どおりにしか保護されません

 そのため,契約書に書いてある契約期間が短かったり,あるいは「中途解約条項」が入っていると,借主はあっさり追い出されてしまうわけです。

 太陽光パネル設置用地を借りる契約の場合,売電期間に合わせて賃貸期間が20年になっていることが多いので,それほど弊害はないのですが・・・案外怖いのが駐車場の賃貸借契約です。

 駐車場賃貸借契約書のひな形は、大抵契約期間が短く設定されている上,「(貸主・借主どちらも)1ヶ月前に予告すれば解約できる」みたいな条項が入っていることが多いです。
 この場合,借主は契約書の記載通りに追い出されてしまいます。

 個人が1台の駐車スペースを借りているだけならまだ何とかなるのですが・・・事業用に広大な駐車スペースを借りている場合は大変危険です。
 たとえば,運送会社が業務用トラックをたくさん停めるため,地主さんから土地を借りている場合をイメージして下さい。
 この場合,賃貸借契約書の期間が短かったり,中途解約条項が置かれていると,あっさり追い出されてしまいます。業務上の生命線とも言える土地の使用権が,簡単につぶされてしまうわけです。

 事案によっては,「地主による追い出しは権利の濫用で,無効だ。」と主張する余地もあるのですが・・・こういった主張はあくまで例外であり,あまりあてに出来ません。

 他にもレンタカー業者など,「建物を建てずに土地を借りている。」「その土地が事業の生命線」という場合は,土地賃貸借契約の内容に注意しましょう。
 契約条項によっては,文字通り事業の存続が危ぶまれてしまいます。

 「うちの土地賃貸借契約は大丈夫だろうか?」と思われたら,お気軽にご相談下さい。
 相談者様の立場や,今後の見通しに合わせた有益な提案をさせて頂きます。

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