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持ち家,他人に貸す時は要注意!4

2019年09月23日


 なお,定期借家契約は,普通の借家契約に比べると,借り手が付きにくくなるというデメリットは否定できません。
 ただ,それ以上に「決まった時期が来たら確実に出て行ってもらえる」というメリットが上回ります

 また,このメリットは,「一般個人が転勤中だけ持ち家を他人に貸す」というケースだけでなく,賃貸アパートを経営しておられる家主様にも当てはまります

「ちょくちょく家賃を滞納するが,2ヶ月くらい遅れたところで補填してくるので,滞納額がそれほど高額にならない」
「深夜に騒音を出して隣室住民に迷惑をかけるが,家賃はきっちり払ってくる」
というような,「迷惑な入居者だけど,契約解除できるほど悪質では無い」という微妙な入居者を追い出すのに効果を発揮するわけです。

 定期借家契約にしておけば,こういった厄介な入居者に対しても,期間満了半年前までに「再契約はしませんよ」と伝えるだけですみます。
 立ち退き料を請求されることなく,出て行ってもらうことができるわけです。

 また,定期借家契約に限り,「契約期間中は,賃料減額請求をしない」という特約も有効になります。(普通借家契約だと,この特約を入れていても無効になります。そのため,賃料減額請求の裁判を起こされてしまう恐れが残ります。)

 ここまで読むと,「でも,契約期間を過ぎたら賃貸借契約が終わってしまうのも不便では?良い借主なら,そのまま借り続けて欲しいんだけど。」と思われた方もいるかも知れません。

 そういう優良借主との関係では,契約期間満了時にもう一度同じ契約書ひな形を使って,定期借家契約を結び直せば,引き続き借りてもらうことが出来ます
 普通の借家契約と違って自動更新にはなりませんので,いちいち契約書を取り交わす手間はありますが,逆に言えば手間はそれだけです。費用もかさむわけではありません。

 再契約の時に,家賃相場が値上がりしていれば,家賃を増額した上での再契約を提案することもできます。また,その時代の法制度・裁判例に則した特約を入れることもできます。

 以上のように,今ひとつ活用されていない定期借家契約ですが,きちんと理解すれば家主側にとって強力な武器になります。

 今回のコラムは,どちらかというと「転勤中に自宅を賃貸に出そうとしているサラリーマン」を念頭に置いて書きましたが,賃貸経営をされている家主様にも強くお勧めしたいテクニックですので,関心を持たれた家主様がおられましたら,お気軽にご相談下さい。

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