(前回「契約書のイロハ(法務担当者様向け)3」の続きです)
前回までは,実印の重要性や,直筆サインの限界についてお話をしました。今回は,ちょっと違った次元のお話をします。
5,契約書が複数ページにわたるときは?
取り交わす契約書が,複数ページにわたることもあるでしょう。(というか,そちらの方が多いでしょう)
その場合,押印は最後の契約当事者欄にだけすればいいのでしょうか?
結論から言いますと,それでは不十分です。
例えば,合計3ページのホッチキスで留められた契約書(当事者が署名押印する欄は3ページ目)があるとしましょう。
この場合,3ページ目にだけ相手の実印を押させても,「1ページ目に書かれている売買代金額には覚えがない。後で誰かがページを差し替えたんじゃないのか」とゴネられてしまうことがあります。
こういった反論を防ぐためには,ページとページを,押印できっちりつなぐことが必要になります。
1ページ目を縦に半分に折り曲げ,1ページ目の裏と2ページ目の表をまたぐように両当事者が押印をします。(これを「契印」といいます。)
(文章ではどうしてもわかりにくいので,「契印 やり方」で検索をして,gifアニメを用いた解説サイトを見て頂ければ分かりやすいかと思います。)
これを繰り返し,契約書の最初のページから最後のページまで繋げることができれば,「1ページ目だけ差し替えただろう。」といった反論を防ぐことができます。
ただ,ページ数があまりに多い契約書ですと,この「各ページ間を契印でつなぐ」のはかなり大変です。
そういった場合は,製本テープで製本をし,製本テープをまたぐように押印をしましょう。これで,契約書全体を押印でつないだのと同じことになります。
その他,A4二枚で済む契約書(簡単な合意書)であれば,いっそA3一枚に割り付け印刷をするというのも手です。これなら,「1ページ目を差し替えただろう」という反論はされません。(1ページ目と2ページ目が横にくっついているのだから当たり前ですが)
とにかく,複数ページにわたる契約書を取り交わすときは,「押印のないページだけ差し替えただろう」と言われないような工夫が必要になるわけです。
案外,この発想が抜けている契約書をよく見かけますので,気をつけて頂きたいと思います。「通しページを打っておけば,契印は不要」という説明を見かけますが,個人的には厳しいかな,と思います。(通しページが入っていようがいまいが,ページ差し替えはできますので)
(次回に続きます)