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契約書のイロハ(法務担当者様向け)2

2018年09月10日


 さて,前回は「契約をするからには,契約書をきちんと取り交わしましょう」という,ある意味当たり前の話で終わりました。

 今回は,「契約書の取り交わし方」についてお話をします。

 「契約書って,契約者達が署名と押印するだけでしょ?取り交わし方なんて今更気にしなくても・・・」というツッコミが飛んできそうですが,隙の無い契約書の取り交わし方をきちんと身につけている法務担当者の方は案外少ないです。
 基本的なところから一つ一つ確認していきましょう。

1,印鑑の書類
 はんこには,色々なレベルのものがあります。シャチハタ,三文判,銀行の届出印,実印・・・。
 シャチハタは,契約締結の場面では(法的効力云々以前に)ビジネスマナーの有無を疑われてしまうので,持ち出す人自体少ないかと思います。さすがに自らシャチハタを契約書に押印したり,相手方がシャチハタで済ませようとしているのを黙ってみている方はいないでしょう。

 他方で,大事な契約書を取り交わすときに,相手方に実印の押印まできっちり求めているかと言えば・・・そこまで徹底している会社・法務担当者様も少ないのではないでしょうか。
 ですが,実印以外の押印では,いざ「この印鑑は自分のものではない。似たような印を他人が勝手に押したのではないか。だから,この契約は無効だ」と言われたときに,それ以上追及することが難しくなります
 特に,100円ショップで売っているような三文判ですと,この反論が出てきたときにはほとんどお手上げです。(同じ印影が大量生産されており,同じ印がどこでも買えますので。)

 次回以降ご説明しますように,何でもかんでも実印を要求する必要までは無いのですが,「重要な契約」「信用できない相手との契約(=横領した従業員に分割で弁償をさせる契約等)」をするときは,できる限り実印を押印させたいところです。これによって,「この印鑑は自分のものではない。知らない。」といった反論をかなりの程度つぶすことができます。

2,実印を押させればいいの?
 このように説明すると,「じゃあ,相手に実印を押印させればいいんですね。」とばかりに,契約相手に実印を押印させておしまい,という方もおられます。
 ですが,実印は,印鑑登録証明書(=個人のものは市役所,会社のものは法務局で発行されます)とセットになって始めて意味を持ちます
 印鑑登録証明書を見たことがある方は分かると思いますが,その証明書にきっちりと印影が載っており,「この印影は,A社の印に間違いない」といことを公的機関が証明してくれるわけです。
 はっきり言って,印鑑登録証明書のない実印は,ただの三文判と何ら変わりありません。たまに,保険会社のような大企業までもが,「実印の押印だけを求めてくる(=印鑑登録証明書の提出まで求めてこない)」ことがあるのですが,これでは実印を取りつけた意味がありません。

 契約相手に実印を押印してもらう場合は,必ず印鑑登録証明書もセットで出してもらうようにしましょう。