さて,前回は,「債権の消滅時効期間」についてお話をしました。
今回は,それと似て非なる問題として,「購入した物に欠陥があったとき,いつまで補償を受けられるのか」についてご説明をします。
このコラムをお読みの方であれば,おそらく「買主である自分は事業者」「購入先も会社」といったように,当事者両方とも事業者であることが多いかと思います。
この場合,購入した物品に欠陥があったときは,一体いつまでに売主側に文句を言えばいいのでしょうか?
これについては,「債権の消滅時効」で並んでいた期間と比べると信じられないくらい短く,「物品の引渡を受けてからたった半年間」となります。
「どうしてこんなに短いのか?」「半年なんてあっと言う間に経つじゃないか。」と言いたいところです。ですが,法律上は,「買主も事業者なら,買い取った物品に欠陥があるかどうかはすぐに気づけるはずだ。なので,すぐに欠陥を発見して売主に文句を言いなさい。」ということのようです。
この理屈なら,「買主が詳しいとは限らない物品(例:飲食店にとってのパソコン機器等)」については,このような短期間での対応は要求されないのでは?となりそうですが・・・残念ながら,そういった例外はありません。
買主が普段在庫として取り扱っている物品であればともかく,そんなに詳しいわけでもない什器備品についてまでこんな短期間での対応を要求されるというのは大変厳しいところですが,それだけに普段の準備・心がけがものを言います。
購入した物品に少しでも気になる点があれば,弁護士等に相談して頂き,「半年過ぎたせいで欠陥品について補償が受けられなくなった」ということがないようにしましょう。
このように書くと,多くの経営者様は「取引相手と信頼関係が出来ていれば,多少期間が過ぎていても対応してくれるだろう。心配しすぎでは?」「補償を渋って得意先を失うようなバカなことはしないだろう。」と思われるようです。
確かに,多くの取引においてはそのとおりです。しかしながら,高額な取引ともなりますと,この補償に対応するだけで売主側の経営が傾くおそれもあるため,すんなりと補償に応じてもらえない可能性があります。
その場合に,「引渡から半年経っているか否か」は,買主側が強く補償を要求できるかどうかに関わってきます。
売主側が補償を渋るほど取引額が大きいということは,補償を受けられない場合の買主側のダメージも甚大ということですから,この半年間というリミットは常々意識して頂きたいと思います。