弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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債権回収13~究極の予防法・対個人~

2018年03月26日

 前回は,「債権回収には莫大な時間・費用がかかる」ということをご説明しました。
 債権回収シリーズ最終回となる今回は,こんな割に合わない債権回収を避ける方法についてお話しします。
 「そんなの当たり前じゃないか。」「法律の解説になってないぞ。」と野次られそうな内容なのですが,10年以上弁護士をやってきた上での実感ですので,耳を傾けて頂けますと幸いです。

 さて,債権回収にかかる「費用」「時間」からも分かるように,裁判から差押えまでこなして無理矢理債権を回収する,というのは本当に大変なことなのです。
 費用や時間をかけて回収できればまだマシな方で,「相手方が倒産してしまった」「差し押さえる財産が結局見つからなかった」という場合は全額焦げ付いてしまいます

 ですので,まずは何より「債権を持たないのがベスト」ということになります。特に,初めて取引をする非事業者・一般個人に対して,後払いを認めるというのは金額の多寡を問わず避けたいところです。

 債権額が高ければ,焦げ付いたときのダメージが大きくなることは言うまでもありません。
 確かに,相手方の手堅い勤務先が分かっていれば,先日ご紹介したような給与差押という手段があります。ですが,毎月の給料の4分の1しか差し押さえることができず全額回収まで時間がかかってしまいますし,何よりその個人が自己破産をしてしまうと完全に逃げられてしまいます
自己破産をしても,勤務先に知られることはほとんどないため,経営者の皆さんが思っているほど自己破産の心理的ハードルは高くありません。「一流企業or役所に勤めているから,破産なんてできやしないだろう。」というのは通用しません。)

 じゃあ,債権額が低ければツケ払いにしていいのか,ということになりそうですが・・・債権額が低いと,今度は法的措置をとりづらくなります。先日お話しした「費用倒れになる」というわけです。(顧問弁護士がいれば,この辺は完全成功報酬制を採る等して克服できることもあるのですが・・・)
 個人客の中にはこういった事情も見越して,「この金額なら裁判なんて出来ないだろう」とばかりに開き直る人もいますので,債権額が低い場合もやはり後払いは好ましくありません
 「金額の多寡を問わず」後払いを避けましょう,というのはそういうことなのです。

 先払いか同時支払を徹底するようにして,個人相手にはそもそも債権を持たないようにするのが鉄則です。そういった意味では,クレジットカード決済を導入するのは大変有効です。
 一般に,クレジットカードのメリットとして「購入に対する心理的ハードルを下げる」点が強調されますが,法務面からみれば回収不能のリスクをクレジット会社に転化できるというメリットが大きいです。
 もちろん,決済手数料の負担はありますし,最近では不正使用による返金要請(いわゆる「チャージバック」)のリスクもありますが,後者は保険によって低減できます。

 その他,
IT化に伴ってクレジットカード以外にも「回収不能のリスクを回避できる」決済方法は増えていますので,費用対効果を意識しつつ導入を検討されてはいかがでしょうか。

 次回・最終回では,対事業者の予防法についてご説明します。