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債権回収12~回収のコスト~

2018年03月12日

 さて,前回まで「債権の証拠化」と「差し押さえるべき相手方の財産」について説明をしてきました。
 ですが,これらの知識を活用して,支払いを渋る相手方から無理矢理お金を取り立てようと思ったら,大変な労力・費用・時間がかかります

 といいますのは・・・前の記事でも少し触れましたが,相手方の財産を差し押さえて債権回収をするには,裁判を起こして勝訴判決をもらわないといけないのです。普通の契約書だけでは,いきなり差押えをしたりはできません。(一応例外として「抵当権等の担保を付けた場合」「契約書を公正証書で作った場合」には,裁判をせずに差押えに移れるのですが・・・公正証書は,債権額が変動する継続的取引では差押に使えないという致命的な弱点があり,あまり実用的ではありません。)

 そして,いざ裁判となると,まず真っ先に皆さんが心配されるのが費用面でしょう。この辺は弁護士や事案ごとにまちまちではあるのですが,ざっくり言いますと
「最初の依頼時に,着手金として債権額の1割(下限15万円ほど)」
「回収できたときは,成功報酬として回収額の1割」
「その他,裁判所に納める印紙代等1万円以上(請求額次第で増えます)」
といった感じです。
 そして,上二つの弁護士費用は,基本的に自腹になります。そのため,少額の債権ですと逆に赤字になる可能性もあります。
 また,裁判中に相手が自己破産を申し立ててしまうと回収不能に陥るのですが,その場合支払済みの着手金は戻ってきません。まさに踏んだり蹴ったりです。

 次に,「かかる時間」ですが,相手方が観念して特に抵抗しないのであれば,弁護士に依頼して3ヶ月程度で勝訴判決がもらえます。ですが,相手方が抵抗してくると,たとえそれが荒唐無稽な言い分であっても,長期化することがあります。(谷田の経験では,契約書に相手方の実印が押されていて,印鑑証明書も取り付けていたのに「何もかも偽造だ!」という無茶苦茶な反論に遭った挙げ句,控訴までされて約2年引き延ばされたことがあります・・・。)

 以上述べたことからも分かりますように,
債権回収は,相手の出方次第で膨大な時間・費用が奪われてしまいます。そして,膨大な時間・費用をかけて勝ち取れるのは,「もらえて当たり前の代金」に過ぎません。良好な取引先であれば,請求書1通ですんなり払ってもらえたであろう代金です。

 では,こんな割に合わない債権回収に付き合わされずに済ませるには,どういったことに気をつければ良いのでしょうか?次回は「究極の予防法」をお話しいたします。