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債権回収11~何を差し押さえる? 売掛金編~

2018年02月26日

 さて,前回は,相手方が給与所得者の場合に効果を発揮する「給料の差押」についてご説明しました。

 ですが,このコラムをお読みの経営者の方々は,給与所得者ではなく事業者に対して債権を持つことの方が多い(というか,それが普通)のではないでしょうか。

 今回は,相手方が事業者の場合に有効な差押財産として,「相手方が他社に対して持っている債権(=売掛金,工事代金等)」をご紹介します。債権回収のターゲットとしては間違いなく最高の部類に入りますので,是非チェックをお願い致します。

 

 例えば,あなたが建設会社だったとしましょう。
 元請が工事代金を払ってくれない場合に,元請がよそへ持っている債権(注文主への請負代金債権や,他の公共工事の代金など)を差し押さえてしまうわけです。

 やり方は預金や給料を差し押さえるときと同じような感じです。裁判所に差押えの申請を認めてもらえば,後は自分でその債権を取り立てることができます。

 給料差押と同じく,「うちにも貸付金があるので支払いには応じられません。」と断られる恐れが少ないというメリットがあります。更に,「退職されて取りはぐれる」おそれが無いという点では,給料差押よりも優れています

 そのため,「相手方が,誰に対してどういった債権を持っているのか」さえ分かれば,一番手堅いターゲットといえるでしょう。

 

 他にも,

「相手方が継続的に他社へ商品を出荷している場合の,売掛金」

「相手方が賃貸物件を所有している場合の,家賃収入」

「ショッピングモールに出店している相手方が,定期的にショッピングモール運営会社から受領する精算金」

「相手方がクレジット決済を導入している場合に,相手方がクレジット会社から毎月受け取る立替金」


等も,同じような理由で差押えに向いています。

 相手方のお金の流れや販売先を注意して観察しておくと,このように良好な差押え対象を発見できたりしますので,お勧めです。

 

 売掛金・工事代金(その他いろいろ)等を差し押さえる際の難点を挙げるとすれば,「申請の際,入手が難しい情報を求められることがあること」くらいでしょうか。例えば,相手方が持っている売掛金を差し押さえたい場合は「売買契約日・売買目的物」を記載しないといけません。(継続的取引の売掛金を狙うのであれば,売買契約日の記載までは不要なのですが・・・)

 また,工事代金を差し押さえるのであれば,「工事名・契約日・工期・工事代金」等を記載するよう求められます。

 民間の調査会社や建設新聞,その他同業者間の情報網などから,これらの情報を収集したいところです。

 

 今回と前回にご紹介した「(個人が相手の場合の)給料」や,「売掛金・工事代金等」は,差押え対象として非常に有効ですので,今回の記事をきっかけに興味を持って頂けますと幸いです。

 

 さて,個別の財産の解説が一通り終わったところで,次回は仕上げの説明に移ります。

 ここまで読まれた方にとっては,身も蓋もない内容も含まれますが,ここまで学んで頂いたことを生かす上でとても大事な説明になります。間違いなく「債権回収の極意」と呼べる内容ですので,是非お付き合い下さい。

次回リンク先はこちら

http://www.tanida-lawyer.jp/201803263052.php