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債権回収3~証拠に残すことが大切!~

2017年11月06日

 さて,今回から,債権回収の実践面に踏み込んでいきます。

 債権回収は,それだけで弁護士の一分野になっていることからも分かるように,突き詰めていくと極めて奥が深いものです。私自身,最近弁護士会の研修で,債権回収の講義を受講したのですが,「こんなやり方もあるのか!」と驚かされるテクニックもありました。(「詐欺的業者の仲間割れを誘って情報を吐かせる」とか・・・一般の実務書には掲載されていないノウハウはたくさんあるものです。)

 とはいえ,平時の業務でお忙しい経営者の皆さんは,そこまで債権回収のノウハウを極める必要はありません。(そもそも,そんな時間はないでしょう)
 経営者の皆さんは,「いざ債権が焦げ付いたときに,スムーズに弁護士にバトンを引き継げる」くらいの準備をしておけば足ります。

 では,普段掛け取引をする際に,どういった準備・心がけをしておけばいいのでしょうか?
 これは,大きく分けて①債権の証拠化,②相手の財産の調査,の二つに分けられます。

 「①債権の証拠化」については,要するに掛け取引をした証拠をちゃんと残す,ということです。
 弁護士として相談を受けていて意外と多いのが「商品を相手に納めた。代金は翌月末までに払うと口頭で約束してもらった」というものですが,口約束では債権回収の難度がグンと上がってしまいます。

 言った言わないの不毛な水掛け論になって立証が大変になる,というのが大きな理由ですが,それに加えて裁判実務特有の経験則があり,債権回収の成功率が下がってしまうのです。
 どういうことかと言いますと・・・裁判官的には「事業者が,高額の掛け取引を口約束ですませるわけがない(=契約書・発注書を作っていないということは,そもそも契約なんてなかったんじゃないの?)」という見方をするのです。
 (実際,谷田がかつて引き受けた事案で「7000万円の工事を口約束一本で引き受けた」というものがありましたが,工事代金の立証にはかなり骨が折れました・・・)

 こういった不利益は,普段の取引から書面を取り交わすように心がけておけばかなり防げますので,まずは,「債権の証拠化」から始めていきましょう。

 この「債権の証拠化」の最もオーソドックスな手法は「契約書を作成・押印すること」ですが,少額・頻繁に行う取引についてまでいちいち契約書の取り交わしなんてやっていられないよ,というご意見もあるかと思います。
 また,契約書を取り交わすにしても,内容を全く確認・理解せずに押印してしまうと不利になる(「契約書を作成しない方がマシだった」というレベルの契約書もありえます)こともあります。
 これらの点をふまえつつ,次回は,債権を証拠化するに際しての注意点やコツについて触れたいと思います。