弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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中小企業の労務管理 ~では,雇ってしまったら?4~

2017年05月08日

(前回「中小企業の労務管理 ~では,雇ってしまったら?3~」の続きです。)

 さて,今回は,会社から一方的な解雇をする際に,
最低限気をつけたい点について解説します。

1,いきなり解雇しない
 従業員側によほど悪い事情(例:
会社の金の横領等)でもない限り,一発解雇は認められません
 「無断の遅刻欠勤が多い」「
同僚や取引先とトラブルばかり起こす」「仕事をいくら教えても全然覚えてくれない・ミスが多い」といった事情であれば,まずは注意・指導(能力不足であれば,適性に合った配置転換も)から入りましょう
 それでも改まらないようであれば,
まずは訓戒処分にして様子を見ます訓戒処分に付してもなお従業員側に改善が見られないという段階になって始めて,解雇を検討することになります。

 とても回りくどいようですが,裁判所は解雇の有効性を判断する際,
会社側が従業員に対して十分な反省・改善の機会を与えたか」をとても重視しますので,以上のような段階的な手当は重要です。

2,やりとりや指導内容を記録に残す
 1で述べたように,会社側は解雇する前に,従業員に対して段階的に注意・
指導をしていくべきですが,その際のやりとり等は業務日報や勤務評定等の形で記録化しておく必要があります。
 「平成??年??月??日,Aの??での作業ミスが原因で,取引先に???
という損害を生じさせた」
 「これに対し,Bが???という指導をした。また,
Aに改善策を考えさせたところ,???という回答が得られたので,これを徹底させることにした」
といったふうに,具体的にどのようなミス・不手際によって,
どのような被害が生じたのか,あるいはどういった形で反省の機会を与えたのかについて,きちんと文書で残しておくわけです。
 なお,
たまに点数・ランクだけの勤務評定を根拠に解雇するケースが見られますが点数・ランクだけでは解雇を正当化する証拠にはなりませんので注意して下さい。重要なのは,「具体的な事情を文章で残すこと」です。

 また,この記録化は,
解雇したい従業員についてだけやってしまうと,単なる狙い撃ちになりますので,好ましくありません。
 業務上の失敗・改善案の検討をすることで,
会社全体の業務改善につながることも期待できますし,どの従業員についても平等に記録化するようにしましょう。

 他にも色々と留意点はあるのですが,
ひとまずは以上の2点を抑えて頂ければと思います。
 これら2点を徹底しても,
解雇が無効とされ会社が敗訴している事案はたくさんあるのですが・・・それでも敗訴する確率を下げることにはなります。
 また,裁判中にいざ和解協議となった場合,
和解金額の水準を事実上抑えることにつながります。(会社側の努力」「従業員側の落ち度」は,和解金額の算定に際しそれなりに斟酌してもらえるものです)
 少々手間は増えるものの費用がかかるわけでもありませんし,
現場にどのような問題が起こっているかをチェックするきっかけにもなりますので,是非労務管理の一環として取り入れて頂ければと思います。

 さて,随分長々と続きましたが,労使紛争関連の連載は今回で終了です。営業を重視して労務を軽視してきた経営者の方も多いかと思いますが,今回の一連のコラムを通じて労務管理の重要性を認識するきっかけになれば幸いです。

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