弁護士になってから9年弱,様々な中小企業の労務管理体制を見てきましたが,「法律や裁判例に照らしても問題ない」といえる会社は極めて少数でした。
経営者にとって,労務管理はそれ自体売り上げ増大につながるわけではないこともあって,退屈な分野のように思えるのかも知れません。
ですが,事業者である以上,従業員を雇用することはほぼ不可避です。
会社の規模を拡大すればするほど従業員も増えていき,それにつれて労使紛争が起こるリスクもどんどん高まっていきます。
ですので,「これから会社を大きくするぞ!」という経営者の方こそ,労務管理は経営戦略の一部に組み込んで頂きたいと思います。
特に,平成18年に労働審判制度が開始して以降は,賃金未払や解雇について従業員側が手軽に争えるようになりました。現実に,労働審判制度の利用件数は近年増加傾向にあります。
司法統計によれば,宮崎地方裁判所の労働審判の件数は,平成21年~平成23年頃は11件前後であったのに対し,平成24年~平成26年には23件前後と2倍以上の伸びを示しています。
もはや,「従業員(or元従業員)とのトラブルが裁判所に持ち込まれる」というのは,珍しいことではなくなってきているのです。
また,これは経営者の方にとっては迷惑な話かも知れませんが,弁護士の数がここ数年で急増し,弁護士も情報発信を工夫するようになっています。その結果,一般市民の弁護士へのアクセスも格段にしやすくなりました。
それまでは,従業員が会社に対して裁判を起こそうとしても「どうしたらいいかわからない」「弁護士に頼むのはなんだか怖い」といった感じで二の足を踏んでいたのが,今やインターネットで弁護士費用・依頼の仕方などが簡単に調べられるようになっているわけです。試しに「残業代」「不当解雇」で検索してみてください。検索1ページ目から,たくさんの法律事務所のHPが見つかるでしょう。
完全成功報酬制(=会社から未払賃金を取れなかったら弁護士費用がかからない)を採用する弁護士が現れていることもあって,従業員が会社を訴えることのハードルはとても低くなっているといえます。
そんな感じで,労務管理体制の整備は,もはや企業にとって「やった方がいいこと」ではなく「やらないといけないこと」になっているのです。
次回以降,「中小企業の労務管理で特におろそかになっている点」を紹介した上で,どういうことから手を付けていったらいいのかを順番にお話していこうかと思います。
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顧問契約を締結して頂くことで,労務管理について継続的なサポートを受けられるようになります。
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