弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

blog

労働者と個人事業主,どこで区別する?その1

2016年01月12日

 遅くなりましたが,あけましておめでとうございます。
 さて,今回は前回コラム「この人は労働者?それとも個人事業主?」の続きを書こうと思います。

 企業が個人に対して仕事をお願いする際,大きく分けて「雇用契約」「業務委託契約(請負)」2種類の方式が考えられますが,これらは単に契約書のタイトル(「雇用契約書」や「業務委託契約書」)だけで決まるものではありません。
 その人の働き方の実態や職場の状況等,様々な事情から判断することになります。
 ですので,「業務委託契約」という名目で働いてもらっていたけれど,実態は「雇用契約」だったと認定され,会社側が思わぬ不利益を受けるということもあります。(例:莫大な残業代を請求される,解雇が認められにくくなる)

 ・・・というのが,前回までのお話でしたね。
 今回は「雇用契約」と「業務委託契約」を区別するにあたって,どういう要素が問題になってくるのかについて触れていきます。
「業務委託契約という方式で仕事をさせているけど,以下の要素のうち『雇用契約寄り』にあたるものがいっぱいある・・・」という場合は,雇用契約にすっきりと切り替えたほうが安全かも知れません。
 では,各論に入っていきます。(説明の便宜上「会社」と「Aさん」と名付けて説明していきます。)

1,仕事の依頼に対して諾否の自由があるか
 会社からの仕事の依頼に対して,Aさんに断る自由がない場合,「雇用契約寄り」となります。
 雇用契約の特徴である「使用者による指揮監督」が強いとみられてしまうわけですね。

2,契約書に書かれた業務以外の仕事をさせることがあるか
 例えば,契約書上は「委託業務:荷物の運送」としか書かれていないのに,それ以外の無関係な雑用まで色々とAさんに命じているとなると,Aさんの会社への従属性が強く現れますので,「雇用契約寄り」となります。

3,勤務時間と勤務場所が指定されているか
 例えば,「稼働時間:午前9時~午後5時半」「稼働場所:会社事務所内」といったように,勤務時間と勤務場所が固定されている場合は,指揮監督関係が強く現れていますので,「雇用契約寄り」となります。

4,代替性があるかどうか
 「代替性」というとわかりづらいですが,要するに「その仕事をAさん自身がやらないといけないのか」それとも「Aさんが他の人に再委託してもいいのか」という違いです。
 前者は「代替性がない」,後者は「代替性がある」という言い方をします。
 前者のように代替性がない場合は,雇用契約寄りになります。
 他方,後者のように「他の人に手伝わせてでも,仕事を完成させればOK」「再委託が契約書上許されている」場合は,業務委託契約寄りになります。
 業務委託契約の特徴として「結果さえ出せばいい」という点があるため,このような差が出るのです。

(次回に続きます)