弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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この人は労働者?それとも個人事業主?

2015年12月16日

 今回は「労働契約と業務委託契約の違い」についてお話しようと思います。
 会社経営の中で「人を雇用する」あるいは「外部業者に業務委託する」などして助けを得ることは必要不可欠です。業務を全部社長一人でこなすわけにはいきませんし,そもそもそんなことをしていたら身が持ちませんね。なので,会社組織が大きくなっていくにつれて「他人に任せられるところは任せる」「どのように任せれば業務がうまく回るか工夫する」ことは,会社経営上の一大テーマとなってきます。

 ただ,この「仕事を他人に任せる契約方法」を巡って,しばしばトラブル・行き違いが生じます。
 上でも書いたように,仕事を他人に任せる方法には大きく分けて「労働契約」「業務委託契約」2つのやり方があるわけですが,「実質は労働契約なのに,業務委託契約の建前を取っている(=労働者を,個人事業主という形式にしている)」ことが結構あります。システムエンジニアや予備校の講師,利用料金の集金人など,様々な職種でこういったやり方を見かけます。

 こういったことが起こるのは,労働契約にするか業務委託にするかで,法的な効果が全然違ってくるからに他なりません。
 経営者の皆さんにとっては,さんざん言われていることのおさらいになりますが,労働契約ということになりますと「簡単に解雇できない」「時間外手当を割り増しして支払わないといけない」「企業側に安全・衛生上の責任が生じる」など,会社側は大きなリスクを抱え込むことになります。他方,業務委託契約であればこれらのリスクの大部分を回避できます。
 そういった狙いから,実態としては労働契約なのに,業務委託契約という体裁をとることが多いようです。

 ですが,「労働契約にあたるか,業務委託契約にあたるか」は,単に契約書のタイトルだけで決まるわけではありません。その人の働き方の実態や会社の体制など色々な要素を総合的に考慮して決まるものなのです。
 「うちはA君と業務委託契約書というタイトルの契約書を交わしているから大丈夫だな。経営が苦しくなったら解約してお払い箱にすればいいし,残業代も払わなくて済む」というわけにはいかないので,ご注意ください。

 では,「労働契約にあたるか,業務委託契約にあたるか」はどういった要素から決まるのでしょうか?この点については関係機関による詳細なガイドラインや裁判例の集積もあるところですので,次回以降ご紹介していきます。
 「うちは業務委託契約という名目で個人に仕事をお願いしているが,大丈夫かな?」「もしかして,後から労働契約として扱われてしまい,ものすごい請求を受けてしまうのでは・・・」と不安な経営者様は,次回以降のコラムにつきましても是非お付き合い頂ければと思います。

 いよいよ今年も残り僅かとなってきました。経営者の皆さんにとっては特に慌ただしい時期かと思いますが,無理をして体調を崩されないよう,くれぐれも健康管理にはお気をつけ下さい。それと,忘年会帰りの飲酒運転は絶対NGです!(車社会の宮崎では,つい油断するとやってしまう方が多いのですが・・・本当に身の破滅ですのでやめて下さいね。)