弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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マイナンバー制度6~聞き出してよい相手・その時期~

2015年09月01日

 前回マイナンバー制度5~対策の概要~は,マイナンバー制度対策の概要について,とてもざっくりとしたご説明をしました。今回からは,具体的な対応策についての解説に移ります。中小企業の総務・経理のご担当者は,是非ご覧頂きますようお願いいたします。

 なお,本コラムは,「個人情報取扱事業者」以外の中小企業様を念頭に置いています。「うちの会社,直近半年で5000人以上の個人情報を持っていたことがあるんだけど・・・」という会社様は,注意点がもう少し増えますので,個別にお問い合わせ下さい(会員カードを発行している小売業・飲食業等の企業様は特にご注意を!)。
※(追記)平成27年9月3日付の個人情報保護法改正により事情が変わりました。同改正法の施行はまだ先ですが,個人情報の保有件数が少ない事業者も「個人情報保護法の適用がある」という前提で今から対応した方がいいでしょう。マイナンバー制度対応の関係で必要になる追加対応策は「マイナンバー制度7」に追記します。

 さて,マイナンバー制度について中小企業が最初にぶつかるのは,「取得」です。今回は,中小企業がマイナンバーを「聞き出していい相手」「聞き出す時期」について解説します。

 「マイナンバーを聞き出していい相手」については,前回「マイナンバー制度5~対策の概要~」で少し触れましたが,「自社従業員とその扶養親族」「自社が仕事を依頼している外部専門家等」「不動産の貸主等」です。
 このうち,「自社従業員とその扶養親族」「自社が仕事を依頼している外部専門家等」は,要するに「お金を払うときに,源泉徴収をする相手」と考えればOKです。どういった人がこれにあたるのかは,所得税法204条1項に書かれています。ちなみに,ここでいう「外部専門家」には弁護士も含まれていますので,谷田も事業者の依頼者様や顧問先様には喜んでマイナンバーをお教えします(笑)。
 ちなみに,源泉徴収をする相手の中にも,支払額によってはマイナンバーを尋ねなくてよいケースがあります。所得税法施行規則84条2項にその点が書かれていますが,「マイナンバーを取得しても別に違法ではない」とのことですので,今回の解説では深入りしません。
 また,「不動産の貸主等」には,「自社物件を貸してくれている地主さん・家主さん」のほか,「自社が不動産を買った時の売主」「不動産取引のあっせんをしてくれた仲介業者」が含まれます。(要するに,不動産取引絡みでお金を払った先)
 個人から不動産を借りたり買ったりした覚えのある会社様はこの点もお忘れなく。

 「マイナンバーを聞き出す時期」は,「相手のマイナンバーが確実に必要になる」ということがはっきりした段階以降であれば問題ありません。
 例えば,従業員の場合は「雇い入れ時」に聞き出してよいでしょうし,外部専門家や不動産関係の取引相手については,それらの人たちとの契約(例:弁護士との委任契約,不動産賃貸借契約等)が成立したときに聞き出してよいでしょう。
 なお,「内定者(=従業員となる前の段階)にマイナンバーを聞いてもいいか?」というご質問を受けることがあります。マイナンバー制度との関係ではおそらく適法でしょうが,マイナンバーを聞き出すことは内定の効力を強める要素となり,内定の解消が難しくなることが予想されますので,やめた方がいいでしょう。「マイナンバーを聞き出すということは,正式な雇用契約に準じた扱いをしていた証拠だ。」と言われかねない,というわけですね。

 次回は「マイナンバーを取得する方法」について掘り下げて解説いたします。かなり細かい話になりますが,とても重要なパートに差し掛かります。