6月17日のコラムでは「利益確保という意味では、予防法務はとても割がいい」と締めくくらせて頂きました。
http://www.tanida-lawyer.jp/201506171252.php
今回のコラムでは、これがどういうことかについてお話ししようかと思います。
確かに、会社の法務面を固めても、売上増大に直結するわけではありません。「この会社はきちんとした会社だな」という好印象を持ってもらえることはあるでしょうが、そこからすぐに顧客開拓につながるというのは正直あまりイメージがわきませんね。
ですが、「会社の利益確保」を実現する方法は、売上増大といった「プラスを増やす」ことだけではありません。「経費節減」「特別損失の回避」といった、「マイナスを減らす」ことも立派な利益確保の手段です。そして、予防法務というのは、「特別損失の回避」という点で不可欠です。
例えば、労務管理がずさんで「未払賃金請求訴訟」を労働者から起こされて敗訴してしまうと、会社の経済的負担は大変大きなものになります。この辺はまた稿を改めて掘り下げようと思いますが、法律に従って労務管理をしていた場合に比べて3倍程度にまで支払額が膨れ上がるケースもあります。
また、外部業者との取引にしても、相手から提示された契約書をチェックせずに押印したところ、予期せぬ違約金条項等が入っていて、トラブル時に予想外の違約金を要求される、というケースも考えられます。
こういった特別損失は、普段から弁護士に相談して頂ければ、大部分は回避可能です。
営業利益を伸ばすのは本当に大変です。その業種の利益率にもよりますが、例えば営業利益を1000万円増加させるには、その何倍も売上を増大させないといけませんし、そもそも売上は経営環境に左右されやすく自社の努力だけではいかんともしがたいところがあります。(この点は、むしろ現場で頑張っておられる経営者の皆さんの方が痛感しておられることだと思いますが。)
予防法務で1000万円の損失を回避できることは、こんなにも大変な「営業利益1000万円増加」と同じ価値を生みます。そして、予防法務による損失回避は、ある程度セオリーが固まっていて確実性があります。(当たり前ですが、景気の影響は受けません)
そう考えると、予防法務は安定的かつ効率的な利益維持に貢献する、とても割のいい考え方といえるでしょう。
経営に携わっていると、どうしても「売上増大」「顧客・販路開拓」といった「攻め」にばかり目が行きがちですが、「リスク回避」という「守り」の考えも併せ持てば、安定した経営が実現できるかと思います。
業績が躍進している中小企業の経営者の方にこそ、予防法務をお勧めしたいところです。