弁護士・中小企業診断士の谷田が,中小企業の皆さんを法律・経営両面で支援します。

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破産管財人と中小企業

2015年05月17日

 今回は,谷田がこれまで比較的数多く担当してきた「破産管財人」という職務についてお話ししようと思います。
 会社が破綻すると,通常は弁護士が会社を代理して裁判所に「自己破産申立て」をします。この申し立てを受けて、裁判所は別の弁護士を「破産管財人」に任命します。
 この破産管財人は,要するに「会社の破産手続が公平・円滑に進むよう,裁判所の代わりに仕切る役」でして,破産した会社の財産を売ってお金に換えたり,債権者らの申告する債権額があっているかどうかをチェックしたりして,最終的に債権者らにお金を配当して破産会社をたたむのが仕事になります。

 ここまで読むと,「なんだ,単に会社にとどめを刺す役なんじゃないか。」「つぶれた会社の処理をとりしきる役なんて,中小企業の支援と関係ないだろう」と思われた方もおられるかも知れません。確かに,破産管財人を担当することで,直接中小企業の支援に役立つわけではありません。しかし,破産管財人を多数こなしていくことで,中小企業支援に役立つ色々なことを学んできましたので,ここでご紹介しようと思います。

1,「中小企業がやってはいけないこと」を生で知ることが出来る
 破産管財人に就任すると,その会社がどういった経緯・原因で破綻したかも調査することになります。その調査の中で,中小企業が避けるべき行動が見えてくるのです。「過剰な交際費」はまあわかりやすいところとして,他にも「本業と全然関係のない流行の事業に手を出して本業が窮迫」とか,「過剰な設備投資でキャッシュフロー悪化」,「大口の販売先に依存していたところ,そこに取引を切られて売上大幅減」など,中小企業が破綻する経緯をこれでもかというほど見てきました。
 こういった経験は、平常時の中小企業が方針を過たないよう助言するにあたって生きてくるのです。

2,「中小企業に関連する様々な手続」を体験することが出来る
 破産管財人は,破産した会社の様々な手続を処理しなくてはなりません。
「税務処理」「社会保険関係の処理」「行政の許認可の処理」等,弁護士が体系的な学習をしてこなかった分野について、否応なく対処する羽目になり,習熟していきます。これも,中小企業が関わる手続についての理解を深めるものとして役立っていると思います。

3,「売掛金を焦げ付かせた債権者側に役立つ助言」が出来る
 弁護士をやっていると,「販売先が破産して売掛金が焦げ付いた。どうしたらいいだろうか」という相談を受けることがよくあります。
 基本的に,販売先が破綻したら取り得る手段はかなり限られてくるのですが,それでも販売先会社の破産管財人との交渉次第では損失を抑えることも出来ます。破産管財人にどういった交渉をするか,どういった条件(お土産)を提示したら焦げ付いた債権の回収に繋がるか・・・これらの助言は,相手方である破産管財人の立場を多数経験していないとできません。 破産管財人としての経験を多数積むことで,「この事件の管財人だったら,債権者のこういった提案を喜ぶはずだ」「債権者側は,こういった提案を管財人に持ちかければ債権回収に繋がるだろう」といったものが見えてくるんですね。

 他にも,破産管財人の経験は中小企業への助言に当たって色々役に立っているのですが、主なところでは以上の通りです。
 こういった経験も生かして,中小企業の皆さんへの支援を一層強化していきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。